Ⅰ型アレルギー主体病の疾患
高温多湿の季節、この時期に増加する病気のひとつに蕁麻疹があります。全身の痒みを伴うため不快な気分なります。蕁麻疹の名の由来は、イラクサ(蕁麻)の葉に触れると発疹が現れたことからと言われ、突然、皮膚の一部が紅く盛り上がり痒みを伴い、しばらくすると消失することから真皮層に生じる一過性の浮腫(むくみ)として捉えられています。特殊なものとしては、汗が関与してポツポツとした赤い発疹が現れるコリン性蕁麻疹などもあります。
急性蕁麻疹は、花粉症と同じく肥満細胞のIgEが関わるI型アレルギーに分類され、1ヶ月以内に消失するものと定義されています。最近増加傾向にある慢性蕁麻疹は、1ヶ月以上持続するものとされ、I型アレルギー以外の炎症反応(非アレルギー性)も関与しているため、より複雑で治りにくいと言われます。
西洋医学では、急性慢性に関係なく、抗アレルギー剤、抗ヒスタミン剤、時にはステロイド剤を使用して蕁麻疹症状を抑えますが、根本治療という点では積極的なアプローチとは言えず、抗アレルギー剤を何年も服用し、長期化している人も少なくありません。
東洋医学の場合は、蕁麻疹の原因は自身の体調が整っていないこと(気血不足、衛気虚弱など)が基本としてあり、その上に外的要因(飲食不適、ストレスなど)が加わることで発症すると考えます。その為、治療は、炎症を抑えながら体調・免疫を整える根本治療を目指します。
日本漢方では、日本独特の高温多湿による湿邪(高湿度)が体表面を覆うことで正常な発散機能を妨げることを重視し、更に精神的ストレスを考慮して、気と水の流れを整える治療法を多く見かけます。例えば、十味敗毒湯という薬は、要らない物・毒を発散排泄させ、気の流れも整えられる蕁麻疹の基本的方剤と言えます。
中国医学では、虚弱を補うことに重点をおいた治療が一般的なようです。例えば、衛益顆粒(玉屏風散)という薬は衛気虚(皮膚粘膜を衛る気が不足している)に用いられますが、応用範囲が広く、女性に多い血虚の人には四物湯、寒冷じんましんには葛根湯などと併用することにより効果を発揮します。
日本漢方は炎症を抑えることに重きを置き、中国医学は免疫を整えるを重視する感じでしょうか。いずれにせよ、個々の患者さんの体質体調に合わせて方剤を決めることには変わりありません。蕁麻疹に限らず皮膚病の長引く人は、胃腸が弱かったり、偏食があったり、精神的なストレスを抱えているケースが多いものです。ストレスの緩和と胃腸にダメージを与えないような生活様式(運動・睡眠から食事内容・水分の取り方まで)を改善しながら薬を服用することが完治への近道になります。