症例
症例1. 40代前半女性
最近、本を読んでも全く頭に入らない、理解できない、頭に霧がかかった感じがするということで相談に見えられました。
胃腸の調子も悪く、食欲不振や軟便になることもあるとのことです。舌診(舌の状態をみて診断する方法)をすると、白い苔が舌全体に生えています。これらのことから、水分が胃腸の負担となり処理できずに停滞し、その影響が全身、この方の場合は脳に及んでいることがわかります。
この方には、「芳香化湿」の漢方薬を使いました。芳香性のある生薬は、鼻から脳への直接的アプローチをして覚醒させる作用があり、更に胃を働かせて水分代謝を高める作用も期待できます。
30日間服用後、来局の際には、本の内容が理解できるようになり、霧もはれたとおっしゃっていました。胃腸の調子も整い、舌苔も綺麗になっていましたが、梅雨の時期でしたので、この期間だけ服用していただきました。その後は再発もなく過ごせています。
症状2. 40代後半女性
毎年、梅雨の時期になると眠気が強くなり、疲れも溜まってくる感じがする。今年は漢方で対応したいと思われ来局されました。
精神的ストレスもあり、昨年末から不眠や疲れに悩まされている。思い返せば例年同じパターンかもしれないとのことです。
この方は、ストレスからの精神的疲労や不眠が長期化し、ついには肉体的な疲労に及んだことで、不眠から傾眠へ変化していったと推測しました。ストレス緩和と疲労回復の生薬、また梅雨に酷くなることから湿邪を取り除く生薬も必要と考え、漢方薬を服用していただきました。
服用当初は、余計に眠くなるので自分に合ってないのでは?と連絡をいただきましたが、しばらく服用していただくようお伝えし、その後1ヶ月過ぎた頃からは熟睡感が現れて日中の眠気も無くなりました。
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梅雨の時期に悪化する症状は、湿気(湿邪)の影響があります。湿邪は「気の流れ」を妨げ、水分代謝を悪くさせることから、症例1にある「芳香化湿法」が頻用されます。症例2の傾眠も「脳に霧かかる」と似たような現象です。細かな点での違いがありますから処方する漢方薬は異なりますが、湿邪を追い出す点では同じです。