三才堂薬局 -漢方・免疫療法-

ガン

「乳がん」の基礎知識
2023年12月22日 17:52

日本人の「乳がん」は、女性の部位別のガン罹患率では最も多い10万人弱の数にのぼり、生涯に罹患する確率は4%(欧米は12%)になります。一方、主な部位別がん死亡数は1.5万人弱ですから、他の部位の死亡率と比較するとかなり低い数字になるため、治療でコントロールしやすい「がん」とも言われています。 (厚生労働省、「2021年人口動態統計・確定数」)

 

西洋医学では

< 乳がんのタイプと治療原則 >

乳がんの分類は、どんな特徴があり何で増殖するのかを分ける「病理学的サブタイプ分類」が用いられます。

①ルミナルA …… エストロゲンとプロゲステロンで増殖する

➁ルミナルB …… 主にエストロゲンだけで増殖。細胞増殖の指標となる「Ki-67」は高値。

③ルミナルB(HER2陽性)…エストロゲンと上皮細胞増殖タンパクの「HER2」が陽性。

④HER2高発現型… ホルモンが増殖に影響せず、主にHER2で増殖。

⑤トリプルネガティブ…ホルモン・HER2も陰性。何で増殖しているのかわからない。

 

①~③のエストロゲンに反応して増殖するタイプは、ホルモン療法の対象になります。このタイプの人には、閉経前は生理を止めてエストロゲン(E2)の分泌を抑えたり、エストロゲン受容体をブロックする治療をおこない。閉経後は副腎の男性ホルモンに脂肪細胞のアロマターゼが関与してエストロゲン(E1)がつくられることから、アロマターゼを阻害したり、閉経前と同様にエストロゲン受容体をブロックする治療をおこないます。(肥満は乳がんのリスク因子)

④のHER2高発現タイプは、ガン細胞の表面にHER2(細胞増殖に関わる糖タンパク質)が多く発現しているため、HER2をカットする治療をおこないます。

実際の治療においては、上記のものに別のタイプの薬を加えて治療効果を高める方法が用いられます。

 

< 治療法 >

  1. 手術 …… がんの病巣を切って取り除く(乳房切除術、腋下リンパ節切除術)。

2.放射線…… がんを焼いて壊す。

3.薬物療法… 上記のホルモン療法や分子標的薬(抗HER2療法)、化学療法剤(抗がん剤)、免疫療法(免疫チェックポイント阻害剤)を用いてガン細胞を攻撃する。

 

東洋医学では

漢方薬は、西洋医学の治療をサポートする補完医療として、副作用の予防・軽減や治療効果を高めるために併用することが望ましいとされています。

手術や放射線治療の場合は、止血作用を高めたり、術後の体力回復を促進するために漢方薬を使うことができます。

西洋医学の薬物の副作用は種類によって異なりますが、その対策を漢方薬でおこなうことができます。例えばホルモン療法の薬は更年期症状のような副作用(ほてり・多汗・骨粗鬆症・脂肪肝など)が現れることがあり、更年期の肝腎不足を補う漢方薬を使用します。

また、直接的に免疫を賦活させる漢方薬は、西洋医学的治療で疲弊する免疫細胞を元気にしたり、殺されたガン細胞を処理する能力を上げることで抗がん剤の治療効果を高めることもできます。

 

東西(中西)併用すると

中西医療の併用は、それぞれ単独で治療をするよりも効果が上がります。西洋医学の欠点である副作用・免疫力低下は東洋医学が得意とするところであり、更に漢方的養生法による生活習慣の改善は、悪化や再発・転移を防ぐ効果が期待できます。

治療の難しいトリプルネガティブだけではなく、ホルモン療法や分子標的薬をお使いの人にも知っていただい併用治療。相談だけでも承っておりますのでお声掛けください。

 

 

 

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