Ⅰ型アレルギー主体病の疾患
スギ花粉が飛散する春は、花粉症の相談が増えます。
アレルギー性鼻炎は、最初はスギにだけ反応していた人でも次から次へと反応する物質が増える傾向にあり、西洋医学の根本治療である減感作療法ではなかなか対応が難しいのが現状です。そのため、治療は重症度に応じてステロイドや抗アレルギー剤の投与が行われています。重症度の判定というのは、パッチテストの結果と自覚症状の軽重が一致しないことも多いため、症状だけで決められているようです。(当薬局で相談される人を見ていますと、反応する物質が多い人や通年性タイプの人は重症度が高い傾向にあります。)
このように、西洋医学では対症療法がメインとなりますが、東洋医学では生体側の状態(体質・体調)を重視した根本的治療を目指します。
アレルギー体質の人は、腸の粘膜が荒れていたり、腸で作られる皮膚粘膜の抗体産生細胞が少なかったりすることで、全身の皮膚と粘膜にトラブルを引き起こします。そのため、根本的治療をするためには腸の状態を整えて免疫を正していく必要があります。漢方では、腸の免疫を担っている『脾』を強化・整えるということが重要になります。
『脾』が整うと、腸が元気になり全身で皮膚粘膜の抗体(IgA)が充分になることで、外からの刺激に対する防御力が高まり過剰な免疫反応も無くなります。(厳密に言うと「脾」以外の要素も関わりますが…)
この外からの防衛を行っている気は「衛気」と呼ばれ、衛気が不足したり巡りが悪い時にアレルギーが起こります。(「気」が不足すると衛気も不足します。)
衛気の働きを正常に近づけることが、アレルギーの根本治療となるわけですが、さて、衛気とはどういうものなのでしょうか?
衛気の働きは大きく分けると4つあります。
①バリア機能(メインの働き)
1. 細菌・ウイルスから身体を守る⇨上記した免疫の働き
2. 外からの物理的刺激から身体を守る⇨例えば、皮膚が厚くなることで内部を守ろうとしてタコができる。
3. 自然環境の変化(温度・湿度)に抵抗して身体を守る。
②身体(体表面)を温める
体内の新陳代謝で産生した熱エネルギーを血液循環によってもらう。又、直接、皮膚の筋肉でエネルギーを産生する。
③肌の栄養を保つ
皮膚に必要な水分・微量元素・糖質・タンパク質・脂質を維持する。
④腎機能の働きを助ける
皮膚を通して水分や代謝されたゴミを排泄して腎臓の働きの一部を代替している。
アレルギーのある人は、衛気の働きの中の①バリア機能の低下があります。そして、衛気の不足があるということは、他の②③④のトラブルが起こりやすいということでもあります。
衛気を強化するためには、先ずは食生活を見直して悪いところは改善し、そして玉屛風散で直接強化する方法がお薦めです。玉屛風散は「漢方の粘膜ワクチン」とも言われ、服用によりIgAの分泌を高めることでバリア機能を強化できます。花粉の時期だけではなく長期服用し体質を強化を図ると良いと思います。
<参考>
免疫力 路京華著 河出書房新社