コラム
何故だか、健康相談は同じ病気・症状を訴える人が重なって来局されます。
6月は汗が出過ぎる症状を改善したいという相談、7月は慢性の咳を治してほしいという相談の人が多く来局されました。
今回は、その中から長引いた咳の症例を3つ掲載いたします。
< 症例1 >
70代男性、コロナ感染後1ヶ月経過、酷くはないがなかなか咳が治らない。病院からは一般的な咳止めが継続的に処方されているが効いてる感じがしない。空咳と強い疲労感が気になるとのことでした。
ご高齢であり疲労感も強いことから、気力を補う、特に肺気を補う漢方薬をお渡ししたところ、3週間で症状が改善できたとご連絡がありました。
感染症後の咳が続くことは珍しくありません。咳喘息と診断されて吸入薬が処方されて1~2ヶ月ほどで治癒する例が多いと思われます。この症例では疲労感の改善を目標とした治療をおこなうことにより、肺の治癒力がアップして咳も治まりました。
< 症例2 >
60代女性、この時期になると発作的に咳が出るようになる。兎に角、突然に空咳が出るので困っている。病院の治療は受けておらず、過去に漢方で良くなったことがあるので今回も漢方薬を飲んで治したいとのことでした。
体格は良く、体力もあります。生活習慣病がある人なので、漢方(中医学)でいう「痰」がありそうです。慢性化して凝り固まった痰を剝がす漢方薬をお渡ししました。投与後は徐々に症状も軽くなり、10日後には治まったとのことでした。
発症の時期が毎年決まっているケースでは、アレルギーの関連性が高くなり、病院では抗アレルギー薬や吸入薬が処方されます。この症例では季節性の炎症を抑え、元々持っていた痰を剝がす治療をおこなうことで咳が治まりました。
< 症例3 >
20代女性、半年以上前から咳がなくならない。風邪をひいたら痰が絡むが、基本的には空咳で、発作的に激しい咳となる。病院では抗アレルギー剤・吸入薬が処方されていたが効果はいまひとつとのことです。
発作性の空咳は、「痰」が原因の可能性が高いので、症例2と同様に痰を剝がす漢方薬で様子を見ることにしました。効果は徐々に現れ、咳発作の回数や持続時間が減ってきて落ち着いてきています。
若い人には乾いた痰はできにくいのですが、アレルギー炎症を繰り返すことで発生する痰(炎症の残骸である)が排除しきれないと、時間の経過とともに乾き固まってきます。痰を捌けば咳は治まりますが、根本的な治療はアレルギー炎症を起こさないようにしなければなりません。
症例2や症例3の原因は「痰」と考えられますが、肺にトラブルがあるのではなく喉が原因の咳だと思われます。
中国では、近年増加傾向の咳である「喉頭源性咳嗽」という新しい概念が出てきています。
これは、主にアレルギーが関与するもので、喉の痒みによる刺激性咳、発作性、空咳、などの特徴があります。
症例2と3はこれらの特徴が備わっているため喉頭源性咳嗽に該当すると思われます。
2023.7.30 上海中医薬大学耳鼻咽喉科教授・郭裕先生の専門講座「喉咳の臨床研究(喉の疾患による咳の臨床研究)」より