三才堂薬局 -漢方・免疫療法-

コラム

起立性調節障害・症例
2023年4月6日 16:40

思春期の起立性調節障害の相談は例年はそれほど多くありませんが、最近数件の御相談のありました。この病気は漢方治療との相性も良く、改善症例も少なくありません。今回は、効果のあった症例のうちの3例を掲載します。

 

<症例1、 10代後半女性、起立性調節障害 >

主訴は、強い倦怠感。他にも慢性的な頭痛、睡眠障害、食欲不振・胃痛、冷えなどを訴えます。

倦怠感は週に1回のニンニク注射を打たないと体力が続かないというほどの重症で、慢性的な頭痛も辛そうです。

― 経過 ―

起立性調節障害は、東洋医学では気虚体質が基本にあると考えます。

3月に投稿した『起立性調節障害と漢方』の分類で考えると、むくみなどの症状が強くないことから「疲労困憊タイプ」になります。朝鮮人参主役の薬が良さそうです。しかし、強い倦怠感があることから、今回はエキス剤(粉薬)では力不足と考え、煎じ薬で対応しました。

2ヶ月後、少しずつ倦怠感が取れて週に2回の注射が1回に減りました。その頃から、冬に向かい冷えも気になるということで冷え用の生薬を増量し冷えは改善。現在は別の症状にポイントを当てた治療を行っています。

 

『起立性調節障害と漢方』参照↓

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<症例2、 10代前半女性、起立性調節障害類似症状 >

主訴は、頭痛と倦怠感で朝起きれない。腹痛があり、食欲が低下しているとのことです。

クリニックを受診したが「起立試験」(座位と起立直後の血圧の差や変化をチェック)に異常がなく貧血でもない。栄養状態の指標となるアルブミン値が低めではあるが、起立性調節障害の診断ではなかったようです。

しかし、症状は起立性調節障害に近いため、その治療法に基づいて治療を開始しました。

 ― 経過 ―

むくみがなく、倦怠感があることから、症例1と同様に「疲労困憊タイプ」になります。また、急に食事量が減ると一時的な栄養失調状態になることもあるため、そのケアも必要となります。

初回は、腹痛などに対する消化器の薬と朝鮮人参主役の薬を混ぜ合わせた煎じ薬とアミノ酸製剤、鉄剤を服用して頂きました。

2週間後、腹痛がなくなったため、倦怠感の生薬を更に強化して服用してもらいました。

8週間後には、食欲が戻って栄養状態もよくなり倦怠感もほとんどなくなりました。登校時の不調は学校が休みの日には調子が良いことから、精神的ストレスの影響が大きいと考え、今までの薬を継続しながら経過観察しています。

 

<症例3、 10代前半女性、起立性調節障害類似症状 >

主訴は、朝起きれない、頭が重い、むくみもあり、ふらふらする、乗り物酔いしやすいとのことです。

お母さんも子供のころ同じような体質だったようで、クリニックには受診せずに来局されました。

脳貧血様の症状もあったため、起立性調節障害に基づいた治療をしました。

 

 ― 経過 ―

朝は起きれないのですが、それほど酷くはなく、胃もたれやむくみを訴えていることから、水分代謝が上手くいってない「めまい・ふらつきタイプ」になります。茯苓・白朮製剤を処方し様子を見ました。

2週間後、胃の具合が良くなり、なんとなく良い感じがするとのことです。

8週間後には、朝のだるさが改善され、ふらつきを感じることもほとんどなくなりました。梅雨から夏にかけては気温が上昇し気力が低下しやすくなるため、秋口まで油断せず続けて行くことになっています。

 

 

この病気は、気虚体質がポイントとなります。高温多湿の気候は「気」を消耗させることから梅雨と夏には症状が悪化しやすく注意が必要です。漢方薬を止めるタイミングも秋や冬に試みるほうが無難と言えます。

 

 

 

 

 

 

 

 

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