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起立性調節障害は、思春期前後の小児に多く、身体の成長、神経の成長過程において、自律神経調節の働きが上手く対応できないことによりおこる疾患と言われています。
自律神経の機能が低下すると、血流が悪くなり、特に脳の血流低下が顕著に現れることから、典型的な主症状である「立ちくらみ」の他、「ふらつき」「朝起きれない」「頭痛」「倦怠感」などの症状を訴えます。また、一種の自律神経失調症でもありますので症状も多彩です。
これらの症状は、起床時から午前中にかけて強く、夕方からは改善する傾向があり、気温と湿度の上昇によっても悪化します。
このような症状・状態は、東洋医学では「気虚」(気力・エネルギー不足)の人に多く見られる特徴的なものです。この気虚により、水分の流れが悪くなったり、血の流れが悪くなったり、血液が不足したりすることで様々な症状が現れます。
治療のポイントは、気虚の症状により2つのタイプに分類して行うことです。
①めまい、ふらつきタイプ
水分の流れが悪くなると水分の停滞がおこります。これを「痰飲」或は「水滞」「水毒」と呼びます。この痰飲があると血液が隅々まで運ばれにくくなり、脳の血液不足による、めまい、ふらつきがおこります。このタイプの人には、茯苓や白朮など水分の偏在を正す生薬の入った漢方薬を使うことで症状が改善されます。
②疲労困憊タイプ
気虚の人は、消化器が丈夫でないことが多いことから、身体に必要な栄養素、特に女性は鉄分・タンパク質の吸収が悪く不足しがちです。血液不足になると、全身の栄養不足となり、手足が重だるく、倦怠感が現れます。このタイプの人には、朝鮮人参や黄耆などの気を補い胃腸を強化する生薬の入った漢方薬を使います。
患者さんは両方の症状を持ち合わせているケースも少なくありませんので、どのタイプがメインなのかを踏まえて処方を決定していきます。
また、難治性のものは、鉄剤の併用も効果的と言われています。
『漢方の臨床』に掲載された「起立性調節障害に伴う不登校と就労不能の劇的改善例」によると、女性は鉄不足から心身の不調が生じやすく、潜在的鉄欠乏症(Fe・Hbは正常)の改善と漢方薬の併用が良い結果をもたらすとあります。(愛知県・漢方医投稿)
養生面においては、
- 起床時は‟ゆっくり”動く。
- 日中はゴロゴロ時間を減らし動くことを心掛ける。
- 長時間の立ちっぱなしを避ける。
- 夜型生活をやめる。
- タンパク質、鉄分不足にならないように。
ガイドラインには、水2リットルと塩分10gの積極的摂取もありますが、水分摂取により胃腸に負担がかかると気虚症状が悪化する可能性もありますので、少量ずつ負担にならないように注意して摂取してください。
成長期の自律神経失調症は、誰にでも起こりえます。精神的ストレス、夜型生活、睡眠不足など自律神経に負担がかかった時に、それに耐えうる肉体であるかどうかが発症の鍵となります。
発症した場合、対症療法的な治療で症状が緩和されても、身体を丈夫にしないと完治しません。養生・漢方薬を取り入れて、体質強化を目指しましょう。